ビジネスで社会問題を解決するデンマークの時計ブランド「Nordgreen」
「一年は365日8760時間、時間は皆な平等に与えられている。」
祖父がいつも言っていた言葉だ。時間は人によっていろんな価値を持ち得る。
自分にとって時間は、お金やどんな高価なモノよりも価値のあることだ。
コペンハーゲンに住み始めてから時間に対する価値観が変わってきた。
東京やNYに住んでいた時は仕事や友人との交流、無限にあるお店や新たなモノゴトで日々忙しく、
時間に追われるという意味で時間を気にかける生活だった。
しかしコペンハーゲンに来てから、生活や環境がシンプルだからか自分の生活のリズムと時間が同じテンポ、
または無理のないテンポになり、時間がとてもポジティブなものに変わってきたのだ。
その理由の一つに、街の風景が大きく関係している。
東京やNYから郊外に車や電車で出かけ再び街へ戻って来る道中で、田舎から都会の風景に変わる瞬間、
急に現実に引き戻されたようなどしっと何かがのしかかって来るようなそんな感覚があるのだが、
コペンハーゲンから郊外へ出かけて再び街へ戻って来る際には、可愛らしい建物や街並みにむしろ心が踊るのだ。
デンマークといえば建築から家具、あらゆるデザインに置いてとても優れている上に、
市の条例で市庁舎より高い建物を建ててはいけない事になっているので見晴らしもいい。
自然も豊かで川や水辺へのアクセスが日常的に行える距離感にあり、野生の動物に出会えるスポットがあったり、
そうかと思いきやその向こうにはモダン建築が見えたり、古い建物もなんとも言えないささやかな愛嬌があるデザインで、見ているだけでほっこりするのだ。
二つ目の理由に、デンマーク人の働き方に関係している。
デンマークでは仕事を通常5-6時に終え、土日はもちろんのこと夏休みと冬休み、
イースターホリデー等もしっかり休み有給は100%消化する。
デンマークの週の法定労働時間は37時間、実際の平均労働時間は33時間。
夕方頃には仕事を切り上げそこからは家族や友人、または自分のために時間を使うそう。
もちろん例外はあるが、周りの友人を見ていると確かに定時に仕事を切り上げ、
そこからまた別の日が始まるかのように充実した残りの時間を過ごしている。
この生活が成り立つのは社会福祉が充実していることがベースにあると思うが、
デンマーク人は仕事以外の時間が充実することで、新たなアイディアや意欲が湧いてくるということを明確に理解しているため、
ワークライフバランスをとても重要視しているのだ。
三つ目の理由に、天候が関係している。
北欧は日照時間が短い暗くて長い冬があるおかげで、暖かい季節や太陽に対するありがたみが半端ないのだ。
今年の夏は異常気象で、夏の間はほぼ毎日素晴らしい天気だった。太陽が出ていればできる限り外で過ごしたい。
コペンハーゲンは自然豊かなので、お気に入りのスポットを探して回るのが楽しみとなっている。
サンセットに合わせてナイスなスポットに移動したり、夏でも夜になると冷え込むのでそのタイミングに合わせて室内に移動するなど、
夏を存分に楽しむには時間のオーガナイズが欠かせないのだ。
そして夏と冬とでは日の出時間はおよそ4時間、日没は6時間も差があるので、季節によって時間の持つ意味が大きく変わってくる。
そんな極端な気候が、体感的に季節や時間を知らせてくれる時計のような役割を果たしているのだ。
他にも理由はたくさんある。
デンマークはなぜ幸福度ランキングでいつも上位なのか注意深く観察していると、汚職が最も少ない国として常に上位なのだ。
汚職が少ないどころかデンマークでは世界中で問題になっている自然破壊・環境汚染、
CO2の排出による温暖化や、貧困や格差等の問題について革新的な方法で向き合っている。
2050年に向けて再生可能エネルギー100%を目指し、
気候変動対策のため2030年から国内でのガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止にする方針も掲げている。
デンマークでは人にも地球にも優しいシステムがある。
子供の頃から”人として生きるための倫理教育” が重視されているため、
モラルに関する事にプライドや責任を人一倍持っているのだ。
デンマークにある世界的に有名なレストラン「Noma」を始めとする“ニューノルディックキュイジーヌ”という食の定義は、
ローカルのオーガニック野菜を使い、動物や魚はなるべく自然な環境で愛を持って育てたもの、
ゴミはなるべく出さずリサイクルをする、CO2をなるべく排出しないなど、レストランビジネスをする上での責任を背負い、
全てに道徳心と愛を持って接し、それらのストーリーを広く伝えていくことで、
世界中で問題になっているフードロスや過剰な食品のプロデュースなど様々な問題に訴えかけている。
ニューノルディックキュイジーヌだけに限らず、デンマークではあらゆる会社がそういった活動に取り組んでいて、
蓋を開けて見るとどれもとても興味深いストーリーを持っている。
最近知った時計のブランド「Nordgreen」もまた、最初はただ単に自身も大好きなBang&OlufsenやAlessiなどのデザインを手がける
ヤコブ・バウナー(Jakob Wagner)による、北欧テイストの自然で品のある奥ゆかしいデザインに惹かれたのだが、
時計を購入することでその一部を中央アフリカの一人に対し2ヶ月分の清潔な水を提供したり、
インドの子供1人に対し1ヶ月間の教育を受けてもらったり、中南米で200平方メートルの熱帯雨林を保護するなどの支援をしているというのだ。
汚職が最も少ない国ということの意味は ビジネスで社会問題を解決する「ソーシャルビジネス」が最も多い国ということでもあるのだ。
募金やボランティアをする事ですらなかなかできないことだけど、購入する側も自分の欲しかったものを手に入れられると同時に、
世界のどこかで困っている誰かを救うことに関われるという、ありがたいビジネスをしてくれているのだ。
そんな流れで購入に至った「Nordgreen」の時計は、時間を知るためだけではなく、自分の価値観を表現する大切なファッションの一部にもなっている。