10年に1度のミュンスター彫刻プロジェクト
10年に1度ドイツのミュンスターという街で行われる芸術祭、ミュンスター彫刻プロジェクトに行ってきました。
今回はアートバーセルから始まり、ドクメンタやドュッセルドルフの美術館まで、一週間の間にプランを相当詰め込んでしまったので、
ミュンスターではあらかじめどこを見るか4、5個まで絞り込み、スケールのでかい作品だけ見て周ることに。
こちらはPierre Huyghe(ピエールユイグ)の作品で” After Alife Ahead ” 。
この場所は元アイスリンクだったそうで、天井の窓は室内の温度と湿度によって開閉するようにシステムが組まれています。
真ん中に見える小さい水槽は、天井の窓からの光をキャッチして黒から半透明に変化します。
水槽にはがん細胞が入っていて、その繁殖の過程を観察しているそうです。 制作費は約一億円程だそうです。
今年の頭にコペンハーゲンへ仕事で行った時に少し時間ができたので、Copenhagen Contemporary Museumにふらりと入った時に、
たまたま展示してあった映像作品がピエールユイグのものだったのを覚えていました。
ヒューマンマスクという映像作品で、福島の震災で廃墟になった居酒屋が舞台で、
芸を訓練させられた猿が人間の女性のマスクやカツラをつけられて登場し、
覚えた芸をひたすら披露してるというものなのですが、
そのマスクとカツラも相まって、もの哀しい人間の感情が絶妙に表現されて良い具合に奇妙でした。
撮影はカメラ付きドローンによって行われたそうです。
かなり不気味に始まり、後に引く内容ですが、見始めた瞬間から引き込まれました。
ミュンスターから脱線しちゃいましが、、
個人的にミュンスターで印象に残っているのはGregor Schineider(グレゴールシュナイダー)の作品。
こちらも大規模な作品で、ミュンスターの中心部にあるLWL美術館の一角を使っての作品です。
彼の作品を見たのは初めてで、なんの前知識もなかったので少々驚かされました。
美術館の裏口のようなところが作品の入り口。
1人か2人ずつしか入れてくれないようで、友達と並んで待つこと20分。
扉の向こう側に何があって、なんでこんなにスローペースでしか入場できないのか、何も想像できない。
順番が回って来たと思ったら、前の人達はカップルで入場させてもらえてたのに、なぜか私と友達は切り離された。
私1人で入場させられ、不安とともに入り口から入ると、目の前は真っ白い壁に真っ白い階段。
普通に美術館の裏側に入って、ただそこにある裏口の階段なのかな、、?という感じ。
とりあえず階段を登るしかなさそうなので登ってみると、ただひたすら上の階へと続いていくだけで、
誰もいないし、真っ白だし、ドアもないす、きっと登るしかないのだろう、、
と自分を信じ4階あたりまでいくと、係りの人ともう一人待っている人がいて、胸を撫でおろしました。
そしてそこからまた一人ずつ、扉の向こうに送り込まれる。
一人旅とか全然平気なのに、こういう一人はすごい不安。笑
遂に自分の番が来た。
扉を開けると狭い簡素な部屋に小さいテレビがあって、向こう側にも扉があって、他には何もない。
それどころか、もしここで迷子になったらどうしようって思い始め、
そうなったら来た道を戻れば外に出られるよね、、と、入って来たドアが閉まってもまたちゃんと開くことを確認してから次の扉を開けると、また同じような部屋が。
次はテレビも何も置いてない。向こう側に扉があるだけ。
とりあえず先に進まねばと思い、次の扉を開けると、また同じような部屋が。そして向こう側にはまた扉が。
何これどうなってるの?!ちょっといい加減にして!くらいの感じになって(大げさ)、次の扉を開けるもまた同じ部屋が。
不安っていうよりどういうストーリーなのか早く知りたくなって、少々先を急いでしまった。
とりあえずまた簡素な部屋に扉が。とにかく進んでみると、自分の前に入ったお兄さんがいる。なんかうろちょろして考えている。
そのスペースはこれまでと違い、部屋じゃなくて、非常口のような場所。
非常口扉が3つくらいあって、普通の扉が1つ( この辺り軽くパニックでよく覚えてない笑)。
全部の非常扉を開けようとするもどれも開かない。お兄さんはあたふたして考えている。
そんなわけで普通の扉を開けると、最初にテレビが置いてあった一つ目の部屋に戻った。
そしてまた奥には扉もあるし、そこを開けたら出口だ!! と思って開けようとするも、鍵がかかってて開かない。
それは最初の部屋と同じ内装なだけで同じ部屋ではなかったのだ。。
冷静に考えれば最初の部屋にそこから戻るわけないのに、、ヤラレターーーと思いつつ、
とりあえずどうしたらいいかわからないし、さっきあたふたしていたお兄さんに聞こう、
と思って一個前の非常口エリアに戻るも、お兄さんまだあたふたしてる。
しかし私的には狭いとこ恐怖症なので、そろそろここから出たいと思い始め、
もう元来た道を戻ろう!と決心して足早に戻った。
そして入ってきた入り口から出たら、そこにいた係りの人に、ニヤニヤと笑顔で、Yess!! って言われた。笑
そこで全体の作品についてやっと理解した。
明確だったのは、自分の思考とすごく向き合ったということ。
あんなに自分の心の声が大きく聞こえて来るシチュエーションもなかなかない。
もし彼の作品をある程度知っていたら、階段を登るところから、すごいなぁ、これよくここに作ったなぁ!
って始まって、非常口辺りで、これはどういう意味なんだろう?って考えたかもしれません。
しかし全然知らなかったので完全に彼の作品にハマってしまったわけです。
こうやって自分の盲点を突かれるからアートって面白いなぁって思います。
そして彼の他の作品もみて見たくなりました。
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